新しい沖縄歴史教科書を造る会

日本史の一部、地方史としての沖縄を脱却して
主体的に故郷の歴史を見て見ようというブログ

沖縄に参政権は時期尚早?これに反論する沖縄時論

  • 琉球新報が主張した参政権時期尚早論

沖縄県においては、日本に併合されてから、
実に33年、明治45年に至るまで代議士を帝国議会に
送る事が出来ませんでした。
その理由として、琉球新報を牙城とする高級士族階層の知識人は、


「沖縄では、現在も特別制度が施行され
他府県の一般制度と同じではない
参政権の条件である直接国税も支払っていない
この部分が改善されてこその参政権である」


と主張していました。
この言論は、実に今においても説得力を持っているのですが、
沖縄時論の論客、神谷正次郎は沖縄時論で反論しました。


  • 沖縄県は選挙権を取得するに過不足無し
神谷が憤慨したのは、第13通常議会に政府が提出した、
衆議院議員選挙法改正案に対してでした。

「北海道沖縄県及小笠原島二於テハ将来一般ノ地方制度ヲ
準行スルノ時二至ルマデ此法律ヲ施行セス」


これは、北海道や沖縄、小笠原島は、特別法が施行されているので
参政権付与は時期尚早であり、将来において、一般の地方制度を
準行するに至る時までこの法律を施行しないという意味です。


神谷は、このような暴論は、意図的に北海道、小笠原、沖縄人の
権利を不当に制限するものであるとし、このように反駁します。


  • 特別法は、一般法と全く同じではないが大差ない
神谷は、この改正案の

「北海道沖縄県及小笠原島二於テハ将来一般ノ地方制度ヲ
準行スルノ時二至ルマデ
此法律ヲ施行セス」


という部分に着目し、沖縄県で施行されている制度は、
一般の地方制度と大差がない事を主張します。


そもそも準行というのは、同じ制度ではなくても、
それに大差がない制度を意味する言葉であり、
沖縄県区制や沖縄県間切島規定は、一般地方制度を
準行したものだと主張するのです。


  • 沖縄の特別法は、市制及び町村制を源とする
そもそも、沖縄県区制や沖縄県間切島規定は132条にあり

「此ノ法律ハ北海道、沖縄県其他勅令ヲ以テ指定スル

島喚二之ヲ施行セス別二勅令ヲ以テ其制ヲ定ム」


とされていて、この法律を根拠に施行されている事を
指摘しています。


この法に準拠して、沖縄の区制は勅令、19号、
間切島規定は、勅令352号で定められています。


つまり、特別制度は、全く別の法律で規定されるのでなく
一般の地方制度の序列の中にあるのです。


  • 内務省令4号により直接国税納入者に参政権が付与される。

さらに直接国税を支払っていない沖縄県民には、
参政権を求める資格は無いという意見については、
明治29年に施行された沖縄県区制にこのような規定があります。


・区制施行二年後には首里と那覇の「区公民」は、
二年以上区に住居する者で一戸を構えた満二五歳以上の独立男子で、
かつ直接国税年額2円以上を納めること


・区会議員は、二年後には等級選挙を経なければならないこと


この規定では、明治32年からは、少なくとも、首里、那覇に
二年以上居住する者で一戸を構えた25歳以上の独立男子で
直接国税2円以上を納める者は公民(選挙権者)となっているのです。


さらに、沖縄県民は税金を支払っていないという意見には、
明治22年には、勅令で定められた直接国税は地租所得税であり
沖縄県民は納税していないという事はないと言っています。


  • 土地整理事業と参政権は一体ではない

琉球新報を牙城とする高級士族階層の知識人は、
「土地整理事業と参政権は一体である」と主張しますが、


神谷は、そもそも、衆議院議員選挙改正法案には、
土地整理事業など一文言も出てこないと主張します。


神谷は沖縄、北海道、小笠原に参政権を付与しないのは、
法律の問題ではなく、ただ、それらの土地に既得権益を持つ
妖怪共の都合、そして、それらの後から併合した地域に対する
帝国政府の偏見であると喝破しました。


謝花昇や当山久三ばかりがクローズアップされますが、
沖縄時論には、神谷のように詳細に法律を調べ、沖縄に参政権が
付与されない、当時は当たり前と考えられた部分に疑義を差し挟む、
頭脳派もいたのです。


                      つづく・・・









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