新しい沖縄歴史教科書を造る会

日本史の一部、地方史としての沖縄を脱却して
主体的に故郷の歴史を見て見ようというブログ

シリーズ 明治政府による沖縄日本論の作成4

  • 今でも流布する言語の共通点からの支配の根拠

明治政府が東京タイムズに発表した琉球が日本に所属する根拠は
大きく四点に分けられますが、三点目からは長文になる為に
ここからは、適宜刻んで掲載する事を断っておきます。


さて、
Ⅰ:みなみしま時代からの大和朝廷への服属、
Ⅱ:地理的に中国より日本が近い


と詐術を尽くしてきた明治政府は次に言語の共通点を
琉球併合の根拠として出してきます。


  • 言語・宗教・民族・習俗:「いろは」の導入
琉球語を書きしるす為の字母、48文字は「いろは」と称される
日本の字母と同じものである。
「いろは」は為朝によって琉球に伝えられ為朝はまた、
琉球の人達にその書き方を教えている。
公用・私用を問わず、文書は日本と同じように漢字交じりの
「いろは」で記される。
「中山伝信録」は琉球国に「いろは」と呼ばれる47文字
(正確には48文字)が存在する事実を記し、
それは舜天が島々の頭領であった時に「発明」されたものであり
日本字母と呼ばれているとしている。

明治政府の主張に対する反論

第一に、いろは文字を為朝ないし
舜天が発明したという事は
歴史的に言って、全くのでたらめです。


現在では、いろは文字は、平安時代の日本の仏僧達が、
難解なサンスクリット語をそのまま理解するのではなく、
音を漢字に当てはめる事で理解する事を発明し、
それが長い年月で簡略化されて、平仮名、カタカナが
生まれたとしています。


前述しましたが、為朝が琉球に来たというのは、
神話伝説の類で事実であるという証拠はありません。



■いろは文字は琉球語を発音するツールに過ぎない


明治政府は得意気に、日本発祥のいろは文字を、
琉球が使用しているから同じ文化圏であるという口ぶりです。
そうならば、いろは文字を使用する以前、公文書が全て漢字で
記されていた時代の日本は中国だったのでしょうか?


日本史上有名な聖徳太子が国内に向けて出した
十七条憲法の一は、以下のような原文です。

聖徳太子(574~622年)



一曰、以和爲貴、無忤爲宗 人皆有黨 亦少達者 
以是、或不順君父 乍違于隣里  然上和下睦、
諧於論事、則事理自通。何事不成


全て漢文ですが、聖徳太子は中国人という事でしょうか?
違いますよね?当時の日本には自前の文字がなく、
公文書には、漢字を用いて筆記する以外にはありませんでした。


であれば、沖縄もまったく同じ事情なのですよ。


沖縄語にも日本語と同じく、元々文字はありません。
重要な事は口承で伝えられ、神歌(オモロ)という形で
残っていますが、14世紀に入り、明朝との付き合いが
開始されると文字が無いでは不便が生まれます。


13世紀後半の英祖王の時代には、禅鑑という
禅僧が琉球に来て浦添に極楽寺という寺を建てますが、
これは英祖王が仏教を庇護したという事でしょう。


この禅鑑が、仏教と共に「いろは文字」を持ってきて、
後は次第に琉球人にも「いろは」が普及していったのです。


沖縄語と日本語は同根の言葉で、文法も同じです。
ただ、奈良時代以後、交流が600年途絶える間に、
双方が独自の進化を遂げたのです。


いろは文字は、アルファベットやハングル同様に、
表音文字で、沖縄語を発音で記すのに優れています。
便利だからそれを採用したのです。


決して、私達は日本人だからという理由で
採用したのではありません。


一方で中国向けの外交文書はもちろん、
漢文で出しています。



■中山伝信録は、琉球における伝聞を記した書


バカの一つ覚えのように主張の最期には、
中国の典籍は~と付け加える明治政府ですが、
「中山伝信録」を記した徐葆光は、
琉球に9カ月しか滞在していません。


その間、彼は、琉球人との交流の中で彼等の考えや
文化、習慣、風俗を、特に批判する事なく
「琉球人はこう言っている」と紹介している、それだけの事です。


考古学的な研究など存在しない18世紀の初期の琉球人が
舜天王がいろは文字を発明したと信じていたとしても
なんの不思議もないのではないでしょうか?


同時に、舜天の父が源為朝と信じていても、
それは素朴な貴種信仰であり、自分達が日本人であるという
意識とはまるで関係がありません。


それは草原の覇者であるティムールが、
チンギスハーンの末裔を名乗り、ムガル朝の王、
バーブルがチンギス・ハーンの子孫を名乗っているからとて

ザヒールッディーン・ムハンマド・バーブル(1483~1530)



彼等が自身をモンゴル人だと思わないのと同じです。















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